
夏目漱石『三四郎』ゆかりの地をめぐる — 東京
『三四郎』の主人公が実際に歩いた道筋を、東京大学本郷キャンパスに辿る。本文中に名指しされる門をくぐり、今ではその名を冠した池までを歩く。
お茶の水で電車を降りた青年が、人力車に乗り込み、まだ見たこともない大学へと向かっていく――行き先の街のこともまだよくわかっていないまま。夏目漱石『三四郎』(1908年)の冒頭、九州の田舎から出てきたばかりの三四郎はこうして東京に降り立ちます。東京という街に、学問という世界に、そしてまだ会ってもいない美禰子という女性に、静かに圧倒されながら。物語はその後もずっと、この戸惑いが自信に変わることのないまま進んでいきます。
このシリーズの中では珍しく、小説の舞台を推測で再構築する必要はありません。東京大学本郷キャンパス――漱石の時代には東京帝国大学――は、三四郎が足を踏み入れたその場所に今も変わらず立っており、大学自身がそのつながりを大切にしていて、構内の池の一つには今もその小説の名前が付けられています。
これは、このシリーズの中で最も短く、最も気軽に訪れられる旅です。東京都心の、たった一つのキャンパスだけで完結します。一般にも自由に開放されており、三四郎自身が上京直後に辿った道のりに近いルートを歩くことができます。
立ち寄り先1: お茶の水から赤門へ — 三四郎自身が辿った道

小説の冒頭、三四郎の乗った人力車は赤門をくぐって大学の構内へと入っていきます。この門の名は本文にはっきりと書かれており、読者が推測や再構築で補う必要はありません。赤門は今も現存し、本郷キャンパスで最もよく知られたランドマークです。
建立は1827年。この赤い色は単なる装飾ではありません。大名の門が朱塗りになるのは、将軍家の娘を正室に迎えたときだけと決まっていて、ここでは加賀藩主・前田斉泰が徳川家斉の娘・溶姫(やすひめ)を迎えた際に、まさにそれが実現しています。現在は国の重要文化財に指定されており、三四郎の歩いた東京の中で、彼が確かに通り抜けたと言い切れる唯一の場所です。
- アクセス: 三四郎とまったく同じ出発点を辿りたいなら、お茶の水駅(JR中央・総武線、地下鉄丸ノ内線・千代田線)を利用します。それ以外の場合は、本郷三丁目駅(丸ノ内線または都営大江戸線)から、門まで直接徒歩圏内です。
- 知っておきたいこと: この記事の執筆時点で、赤門は複数年にわたる修復工事のため通行止めになっています(2025年11月〜2027年9月)。外から見たり写真を撮ったりすることはできますが、三四郎のように門をくぐることはできません。近くにあるほかの開放されている門から構内に入りましょう。
立ち寄り先2: 三四郎池

正式名称は「育徳園心字池」。このキャンパス一帯がまだ大学ではなく大名の屋敷だった17世紀に造られた庭園池です。小説の中で三四郎が美禰子と初めて出会う場所であることから、通称「三四郎池」として広く親しまれるようになりました。大名庭園から明治の大学構内へ、そして小説の中の出会いの場面がそのまま地図に刻まれるまで――この積み重なった時間の層こそが、この場所をわざわざ歩いてみる価値のあるものにしています。
池そのものは小さく、いびつな形をしていて、岸によってはかなり急に落ち込んでいるため、すぐ真上に来るまで水面が見えないほどです。小道が木立の間に折れ込むと同時に、キャンパスの喧騒がふっと遠のいていきます。たいていの日は、岸辺の岩の上で亀が甲羅干しをしています。
本文は、出会いの場面を現在の池のどの正確な地点と結びつけているわけではありません。そのため、これは正確な場面の特定地点というより、伝統的に受け入れられてきた舞台として捉えるのが適切です。
それでも、この水辺に立っていると、九州から出てきたばかりの青年が誰かの前で初めて完全に自分を見失った場所は、ここだったのだろうと素直に信じたくなります。東京への、学問への、そして美禰子への、あの静かな戸惑いのすべてが一気に像を結ぶ瞬間――まさにこんな水辺のそばで。キャンパスは池の中に何か特定のものを見るよう求めてはいません。ただ、三四郎が感じたものを感じ取れるくらい静かな場所に、しばらく立ってみればいいのです。
- アクセス: 赤門から構内に入り、少し歩いた先にあります。東大前駅(南北線)を利用すれば、正門まで約1分、そこから池までさらに徒歩5〜10分です。
- 知っておきたいこと: 池を含むキャンパスは無料で開放されており、自由に散策できます。開放時間はおおむね毎日午前7時から午後6時までです。大学入学共通テストの実施日や、1月・2月下旬の大学独自の入試日には、キャンパスへの立ち入りが制限されることがあるため、その時期に訪れる場合は事前に確認しておくとよいでしょう。
旅の実用メモ
- 訪問に適した時期: 池周辺の紅葉が見頃を迎える11月中旬〜12月上旬、または新緑の春がおすすめです。真夏は蒸し暑さと蚊のせいで、水辺の雰囲気が一気に台無しになります。
- 拠点にする街: 東京都心であればどこでも構いません。本郷は多くのエリアから短時間で行けるため、半日の散策として気軽に組み込めます。
- 言語について: 東京都心のエリアなので、通常の観光インフラの範囲で問題なく回れます。
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