四国文学紀行 — 松山から高松へ
夏目漱石『坊っちゃん』の舞台、道後温泉の松山から、村上春樹『海辺のカフカ』の図書館をめぐる高松まで。四国を鉄道で横断する、二つの小説をたどる旅。
四国最大級の二つの都市、松山と高松は、島の両端に位置しています。この二つの街に結びついた小説も、およそ一世紀の隔たりがあります。松山には、夏目漱石が1906年に発表した喜劇小説『坊っちゃん』。高松には、村上春樹が2002年に発表した『海辺のカフカ』です。
JR特急「いしづち」を使えば、乗り換えなしでおよそ2時間半で両都市を直接結んでいます。どちらか一方の作品のファンにも、両方読んだ読者にも、気軽に島を横断できるルートです。
立ち寄り先1: 道後温泉(松山) — 『坊っちゃん』の舞台

漱石は1895年、松山で英語教師として不遇な一年を過ごし、その経験を『坊っちゃん』という、気の短い青年教師が周囲と衝突していく短い喜劇小説に仕立てました。作中では、現在も営業している日本最古の温泉施設・道後温泉本館が、「住田の温泉」という見え透いた変名でほとんど隠されることなく描かれています。館内には、今も「坊っちゃん泳ぐべからず」という木の看板が掲げられており、作中で語り手が湯船で泳いで叱られる場面にちなんでいます。
松山はこのつながりを街全体で受け入れており、レプリカの蒸気機関車や、時計仕掛けのからくり時計まで温泉前に設置されています。詳細は、『坊っちゃん』ゆかりの地をめぐるガイドで紹介しています。
立ち寄り先2: 高松・坂出 — 『海辺のカフカ』の図書館

村上春樹『海辺のカフカ』は、家出をした少年が高松のある私設図書館に身を寄せる物語です。この図書館について、村上春樹自身は完全な創作だとはっきり語っています。「甲村記念図書館が実在する、というのは嘘です。存在しません。私が考え出したものです」。
それでも読者の探索は終わっていません。最も頻繁に候補として挙げられているのは、高松市内ではなく、隣接する坂出市にある「鎌田共済会郷土博物館」です。1922年に建てられたこの建物は、小説内の架空の図書館と同じく、篤志家によって設立され、美術品を収蔵しているという点で重なります。詳細は、『海辺のカフカ』ゆかりの地をめぐるガイドで紹介しています。
全ルートをGoogleマップで見る旅の実用メモ
- 区間の移動: JR特急「いしづち」が、高松・松山間を乗り換えなし、およそ2時間半で直接結んでいます。坂出へは、高松から普通列車でおよそ20〜30分の寄り道です。
- 順番: どちら向きから回っても構いません。松山から出発すれば、高松で旅を締めくくれます。高松からは、JR「マリンライナー」で岡山へ抜け、新幹線に乗り継いで本州へ戻ることもできます。
- 訪問に適した時期: 四国が最も蒸し暑くなる時期を避けるなら、春・秋が両都市とも過ごしやすいでしょう。
- 拠点にする街: ゆったり回るなら、松山(道後温泉が便利です)と高松にそれぞれ一泊ずつ。かなり長い一日で一気に回ることも可能です。
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